kitombo.com | 日本の考古学はこれでよいのか | 2007年6月25日
kitombo.com

日本の考古学はこれでよいのか
「日本の考古学はこれでよいのか」

大地舜
6月25日

『神の手』旧石器遺跡ねつ造から、高松塚古墳壁画破壊に見る日本考古学学界の隠蔽体質

はじめに

日本の考古学はこれでよいのか

 みなさんは「神の手」による前期旧石器遺跡ねつ造事件を覚えているでしょうか?
 この事件が毎日新聞取材班によってスクープされ、大々的に新聞報道されたのは二〇〇〇年一一月五日ですから、かれこれ七年も前の話になります。
 私は新聞などでニュースが流れると、自動的に連絡してくれるヤフーのインターネット検索サービスに、「神の手」「旧石器」「高松塚古墳」などのキーワードを登録しています。
 その結果をみると、「高松塚」は毎週のようにニュースとなっていますが、「神の手」で拾われてくるニュースはサッカー関連ばかりです。「旧石器」も一年に一回ぐらいしか、新聞記事になったという報告がきません。
 つまり、「神の手」も「旧石器遺跡ねつ造事件」も完全に、過去のこととして忘れ去られているようです。
 神の手・藤村新一は、関連した四四遺跡のねつ造を認め、病院に入り、その後、結婚して名前を変えて密かに暮らしています。
 「神の手」の師匠であり、旧石器の専門家であった明治大学出身の鎌田俊昭はお坊さんの仕事に戻り幼稚園の経営に精根を注いでいます。もう一人の師匠は東北福祉大学教授の梶原洋ですが、精神的ショックが大きく、いまだに考古学研究に復帰できない状態だそうです。一方、ねつ造事件の前半の頃、東北大学の助手で「前期旧石器があるのか、ないのかという論争」の決着に大きな役割を果たした岡村道雄は、その後、文化庁の文化財調査官に抜擢され、現在は奈良文化財研究所に天下りして、調整官という仕事をしています。
 他にも「神の手」の取り巻きとしては国学院大学出身の横山裕平がいますが、今は行方がしれません。初期の頃、鎌田俊昭の相棒をつとめ、座散乱木遺跡の発掘に貢献し、その後、福島でねつ造遺跡をいくつか発掘した柳田俊雄は東北大学の教授になっています。一方、「神の手」グループの大師匠として祭りたてられていた芹沢長介は、東北大学名誉教授、芹沢圭介博物館の館長をしていましたが、今は故人です。
 一般庶民から見ると、「旧石器遺跡ねつ造事件」は忘れ去られ、旧石器考古学の世界は平穏無事に見えます。しかし、ほんとうにすべて解決ずみで、旧石器考古学者たちは心安らかに、新たな発掘・研究にいそしんでいるのでしょうか?
 そこで足掛け三年、三〇数名の旧石器・縄文関連の考古学者にインタビューし、関連資料を精読して旧石器遺跡ねつ造事件の真相を追及してみました。
 一方、最近は国宝である高松塚古墳の壁画が損傷している事が知れ渡り、古墳を破壊して、壁画を取り出して保存する事が決まりました。二〇〇五年に月刊「文芸春秋」誌の依頼で、二ヶ月にわたりこの件に関して取材をしましたが、その結果、判明したのは、壁画が損傷を受けたのは、発見されて一〇年以内であり、その事実が隠蔽されてきてきた事実です。
 この二つの事件には、共通する性格が潜む事を感じます。そう、隠蔽体質です。
 本書は「ねつ造事件と高松塚古墳壁画損傷の真相」に迫ることで、考古学界が新たな道を歩めるようにすることを狙っています。

目次

  • はじめに
    日本の考古学はこれでよいのか
  • 第一章
    『神の手』に罪は無かった
    • なぜ三〇年近くもねつ造が発覚しなかったのか?
    • 座散乱木遺跡第三次調査の重要性
    • 岩宿遺跡から月見野・野川遺跡、そして座散乱木遺跡へ
    • 座散乱木遺跡の検証
    • 火砕流の謎
    • ガジリと鉄条痕と黒土の謎
    • 金取遺跡の石器の出方
    • ふわっとした土からでる石器の謎
  • 第二章
    馬場壇から多摩ニュータウンまで
    • 懐疑的な関東の研究者たち
    • 小田静夫の批判はなぜ無視されたか
    • 多摩ニュータウン遺跡発見の計画性
  • 第三章
    群馬、栃木、埼玉、岩手から上高森遺跡まで
    • 七曲遺跡の謎
    • 大工原豊の疑問
    • 菊池強一の批判
    • ねつ造をあばこうとした竹岡俊樹と角張淳一
    • 二〇〇〇年一一月五日朝の衝撃
    • 「学問が犯した罪」なのか
  • 第四章
    考古学界の悪しき体質と、反省の無い学者たち
    • 独断専行する考古学界の大ボス・戸沢充則
    • 自白メモを黄門の印籠にする戸沢
    • 隠蔽工作に走る戸沢
    • 怪しい男・戸沢
    • 考古学者は、現場監督
    • 悪しき体質は高圧的な態度
    • 高まる岡村道雄への非難
    • 懲りない考古学者たち
    • 考古学界の悪しき体質
  • 第五章
    ねつ造事件の本質はなにか?
    • 三つの見方
    • 「インド大魔術」という謎の言葉
    • 共犯者がいると主張する岡村と鎌田
  • 第六章
    学者による不正行為はあったのか?
    • 不正行為は精神に問題がある人物がいるから起こるのではない
    • 研究における不正行為の定義
    • ベル研究所のヘンドリック・シェーン事件との相似
    • 日本の旧石器遺跡のねつ造事件の結論
  • 第七章
    高松塚古墳石室解体にみる文化庁の体質
    • 成功した文化庁の自爆テロ
    • 消えた貴重な写真原板
    • 不発に終わった文化庁自爆テロ第一号
    • 羊頭狗肉(ルビ・ようとうくにく)の保存施設
    • 縄張り根性の犠牲になった壁画
    • 河合長官は責任をとるべきか?
これまでのコラム
kitombo.com