kitombo.com | げんさんの住処 | 2005年5月23日 
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げんさんの住処
「げんさんの住処15 最終回」

網中裕之
5月23日

 翌日の朝、正太はおにぎりと惣菜を持ってアパートにやってきた。
 「おっちゃん、おはよう。朝御飯を持ってきたで。一緒に食べよう」
 ドアをノックしても、中からは物音がしなかった。
 「おかしいなあ。散歩でも行ったんかな」
 ノブに手を掛けると、カギは開いていた。
 「おっちゃん。入るで。まったく不用心やな」
 正太が上がり込むと、ゲンさんはまだ布団の中で眠っていた。
 「よっぽど疲れたんやなあ」
 正太は起こさないように、やかんに水を入れ、それを火にかけた。振り返ると、ゲンさんは笑っているように眠っていた。しかし、その表情は確かに固まっていた。
 「おっちゃん」
 正太は大声で叫んだ。身体を揺すり、何度も何度も大声で呼んだ。ゲンさんは、目を覚ますことはなかった。
 その顔は、まるで終の住処を見つけたかのように、穏やかなものだった。

<了>

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