kitombo.com | 今週の疑問 | 2003年5月5日
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今週の疑問
「南半球からの視点(2)
「ゴルフをするならダウンアンダー」」

(1989年1月1日『実業の日本』掲載)

大地舜
5月5日


 オーストラリアでは毎週のようにゴルフを楽しんだ。日本と異なり、ゴルフは子どもから老人までが気楽に楽しめるスポーツだった。オーストラリアの生活水準は、質から見るとはるかに日本より高い。日本で給与を貰って、オーストラリアで生活できたら理想的だ。漫画家や作家で、豪州に生活の場を置く人が多いのも当然なのだ。

『仕事が趣味』というが
「パパまだなの?」
 7歳になる息子は、グリーン上に寝そべって、私を待ち切れない。この子は3歳からゴルフを始めて、年に5-6回はコースに出ている。暖かい日曜日の夕方は、私のような子連れゴルファーで、コースは賑やかである。
 ゴルフを特別教えたわけではないが、この子の方が、ボールをストレートに打つのは上手になってしまった。今では、私がボールを林の中に打ち込んでノロノロしていると、先にグリーンに着いて待っていることが多い。
 オーストラリアでは、ゴルフは子供から老人までのスポーツである。子供のための無料レッスンはあるし、老人たちは毎日のようにゴルフをして健康的である。
 この国の人々は50歳から60歳で引退し、老後はゴルフ、ローン・ボウリング(ジュータンのような芝生の上でボールを転がす競技)、セイリングなどをして楽しむのが当たり前である。
 "仕事が趣味"という人は別として、60歳を超えて働く人は、この国にはあまりいないようだ。
 お金持ちだと、40歳前後で引退して、後は世界中の山に登ったり、海に潜ったりして趣味を満喫した生活を送っている。
 日本人の場合、ほとんどの人は生活に追われ、仕事に追われ、"仕事を人生の趣味"にするほか、方法がないのが普通ではないだろうか? 50歳で引退して悠々自適の生活が出来る人が何パーセントぐらいいるのだろうか?

入会金と年会費で100ドル
 「高い、高いと言われている会員権だが、200万円以下で買えるコースもある……が、高額コースでしかゴルフが楽しめないわけではない。ゴルフ発祥の地、イギリスのゴルフ場を思い浮かべながら、河川敷でカートを引っ張るのも一興ではある」
 これは、いつか「実業の日本」誌に載っていた記事である。
 私が会員になっているブルーマウンテンズ市のゴルフクラブの入会金と年会費は、含わせて100ドル-=7000円)である。これだけ払えば、一年間、毎日ゴルフをしていても、グリーンフィーは取られない。年金生活をしている老人でも、ゴルフを楽しめるわけだ。
 このクラブはシドニー市から車で1時間半の山の上にあり、入会金も安いほうかも知れない。でも、シドニー市の名門コースでも、入会金は3000ドル(20万円)程度である。
 私の所属しているクラブのコースは極めて美しく整備されている。フェアウヱーは刈り込んだ芝生で覆われているし、池や花壇のレイアウトも庭園のようである。散水用のパイプがティ・グラウンドからグリーンまでの間の隅々に張り巡らされており、夏のドライシーズンには、陽の沈む頃からコース全体に散水される。
 たった100ドルの年会費で、何でこんなに行き届いた手入れが出来るかというと、それは、ゴルフクラブが営利団体でないことにあるようだ。
 この国では、ゴルフクラブの所有権は会員にある。会員が会費で経営しているクラブであり、クラブが解散したら、財産は会員間で分割されることになる。
 士地は50年前に市役所から安く有償提供されており、コースは会員の労働奉仕と寄付金で造成されてきた。クラブの役員は毎年選挙で選ばれ、無報酬の奉仕である。だから会費がこんなに安くてもやっていける。
 他のスポーツクラブも同様である。
 私がやはり会員になっているスプリングウッド・テニスクラブには、人工芝のコートが10面あり、そのうち七面には夜間照明の設備が付いている。年間会費は25ドル(2000円)で、いつでも自由にプレーが出来る。
 このクラブの唯一の問題は、プレイヤーが少ないことである。土、日の午後の一番混んでいる時間帯でも、10面が全部埋まることは少ない。
 スプリングウッド・テニスクラブはシドニー市から一時間の場所なので、プレイヤー不足だが、シドニー市内のコートは、週末は予約でいっばいらしい。しかし、少し郊外に出れば空きコートは幾らでもあるし、ちょっとした金持ちなら自宅の庭にコートを持っている。だからコート探しに苦労することはまずない。

生活大国への要求を
 日本でゴルフに大金を払うくらいなら、いっそのこと、ダウン・アンダー(英語圏ではオーストラリアのことをこう呼ぶことが多い)に、1週間ぐらい休暇を取って来たらどうだろう。
 こちらでプレーすると、まずグリーンフィーに一日9ドルかかる。5日間プレーするとして45ドル。宿泊料が40ドル(郊外のドライブイン)として、6日間で240ドル。航空券は日本で買うと8万円程度(2003年現在)。それ以外の経費としては、食費、飲み代、お土産代として700ドルもみておけば十分だ。
 そうそう、それにシドニー。空港から私の所属している山のクラブまでタクシーを飛ばすと、片道160ドルかかる。
 したがって、総合計は、1305ドル(x0.7=2003年現在)プラス航空券だ。日本円で、大体18万円もあれば十分ということだ。これなら100万円あれば、五年間連続して遊びに来ることができる勘定になる。このほうが、河川敷で、イギリスのコースを想像しながら歩くよりは、趣があるのではないだろうか。
 筆者の住んでいる人口3500人の町、というか村には、テニスコート2面、ゴルフコース、サッカー場、クリケット場、大スイミングプール、ローン・ボウリング場2面がある。
 人口が少ないので、当然どこの施設もガラ空きで、ほぼ使いたい時に使える。この程度の施設は、この国では、ごく当たり前である。
 日本の市町村で、人口比で見て、これだけの施設を備えている所がどれだけあるだろうか?
 貧乏だった日本は、やっと経済大国になった。次の目標は、当然、生活大国になることだろう。
 確かに日本の労働者の平均賃金はオーストラリアの二倍となった。しかし、生活水準は、未だにオーストラリアの半分以下というのが、実感である。

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