kitombo.com | 今週の疑問 | 2003年5月19日
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今週の疑問
「南半球からの視点(4)
「ラッキーカントリーへの投資のすすめ」

(1989年3月1日『実業の日本』掲載)

大地舜
5月19日


 14年前になるが、私はこの原稿を書きながら、同時にオーストラリアに投資をしてみた。シドニー市に家を買ったのだ。結果は失敗だった。帰国して数年後に豪ドルがどんどん安くなり、家の評価額は上がっていたが、日本円に換算すると目減りしていた。
 日本でフリーライターになって生活費に困り、この家を売ってしまったが、利益はまったくなしだった。いつか再び、ラッキーカントリーの恩恵をこうむるために、投資をしたいと考えている。

600万円の豪邸
 隣の士地に赤レンガのしゃれた家が建った。500坪(1650平方メートル)の士地に、かなり大きな家である。どんな人が住むのかと思ったら、22歳の電気技師と、銀行に勤める20歳の女の子だった。
「ピーター、若いのに偉いね-、お金持ちなんだねー」
「いやー、銀行や親から借金して建てたのさ、これからが大変だよ」
「ー生かかって返済するの?」
「エー、冗談じゃないよ、5、6年で返済するつもりだよ」
「でも……、この広い土地とこの家じゃ、10万ドルはかかったでしょ?」
「いやー、士地が1万5000ドルに家が4万5000ドルだから、全部で6万ドル(600万円)だよ」
「エー、日本でこんな家を建てたら、家だけで20万ドル(2000万円)はするよ……」
 ピーターの案内で家の中を見せてもらった。
 広い客間には大きな暖炉があり、踏むと沈む厚いジュータンが一面に敷かれている。天井から床までガラス張りの客間の窓からは、広い前庭が見える。主寝室にはウォーキングイン・クロゼツトと専用のバスルームが付いている。
 寝室は全部で4部屋。それに広い台所と食堂、そして家族用の居間。居間の外には赤レンガのベランダが配置され、バーベキュー用コンロが置かれている。
 暖炉の前のソファーに腰掛け、芝生の庭を眺めていると、「そういえば、俺は40歳を超したのに、まだ自分の家を持つなんて夢のような話だな…」と、思わず溜め息が出てしまった。
 筆者の住んでいるブルーマウンテンズ市は、シドニー市から車で2時間、日本でいえば箱根のような、風光明媚な観光地である。
 この辺りの土地、家屋の値段はシドニー市周辺に比べたら当然安い。市役所で調べたら、筆者の住んでいる300坪(990平方メートル)の土地の評価額は5000ドル(50万円)だった。
 隣の家に比べると筆者の家は、3寝室に居間、食堂があるだけで狭い。家賃は1力月550ドル(5万5000円)である。

ハードワークの報酬
 先日、あるテニスクラブ主催のダンスパーティに出かけ、若夫婦と親しくなった。夜中の二時頃、「俺の家に来て最後の一杯やろうじゃないか……」と誘われて、ノコノコ後についていった。
 大きな家だった。プールが前庭にあり、その先は谷間の牧場。この辺りはシドニー市から一時間くらいのところで、住民の多くはシドニーまで毎日通勤している。
「俺もこの家や牧場が最高に気に入っているんだ。土地は5エーカーしかないけどね。でも、土、日にやる仕事がたくさんあるし、子供の教育上にもいい場所だろう? 夜になると、小さなカンガルーや大きな鳥が来て、俺の手から餌を食べるんだ。空気は清涼だし、シドニーから帰ってくると、生き返った気分になるよ」
「ウーン、そうだろうな、しかし、ただのサラリーマンでこんな家に住めるなんて……、親父さんから遺産でもあったんだろう?」
「イヤ、俺の親父は移民で、一生、労働者として働き、何も残してくれなかった。俺だって高校しか出てない。ただ一生懸命働いてきたのさ。そして無駄なことにお金を使わなかっただけさ。俺の国じゃ、だれでも真面目に一生懸命働けば、このくらいの家は持てるさ。ハードワークの当然の報酬だろう」
「ウーン、なるほど……でもね、日本じゃいくら一生懸命働いたって、まずこんな家には住めないね。土地の値段が高いし、人口が多いし、一生かかってハト小屋みたいな小さな家が自分のものになれば、運のよいほうだよ」
「本当かシュン? じゃー、お前はここに永住しろよ」
「……」
 リッキーはオーストラリアに住んで8年になる。中国系マレーシア人で、4年間ほど観光ビザで不法滞在していたが、恩赦があったとき滞在ビザを取得し、この国の市民権を得ている。
 このリッキーがシドニーの街に家を建て始めた。200坪(660平方メートル)ほどの狭い土地だが、土地代だけで1000万円はするだろう。
「リッキー、よくやるね!」
 それ以上、私には言う言葉が出てこない。32歳で家を持つ。それも裸一貫でマレーシアから来て8年目だ。オーストラリアでは、ハードワークの報酬が約束されているようである。

牧場や別荘投資も
 オーストラリアは広大な土地を持ち、豊かな資源に恵まれているラッキーカントリーである。一方、日本はそれと全く正反対の環境にある。
 確かにそこには越えられない壁がある。日本人がいくら頑張ったって、このような広大な土地は日本にはないのである。
 しかし、過去40年間、日本は敗戦による国土の崩壊という逆境を逆手にとって大成功し、経済大国となった。今後の問題は狭い士地の中で、どうやってより質の高い生活水準を実現するか、また国民のハー-ドワークに対して、欧米水準並みの報酬をどう与えていくかであろう。
 問題の解決策はもちろん国内にあり、海外にはないことを、十分に弁えておく必要がある。
 それを前提にして、南半球の国ぐに、例えばオーストラリアに個人が投資をするのはどうだろうか。そうすれば、我々日本人もまたこのラッキーカントリーから、豊かな恩恵を受けることができそうである。
 投資対象としては、土地、建物などの不動産や、株式投資などが考えられる。すでに多くの日本人がハワイやアメリカ本土に別荘などを持っているようだが、これから先、オーストラリアに別荘や牧場などを持つのも悪くないアイデアではないだろうか。時差は一時間しかないし、日本の冬はこちらの夏であり、補完関係にある。
 もちろん、個人投資をする先の国、つまりオーストラリアから金面的に歓迎されることが、大前提である。
 歓迎されるためには、この国の文化を理解し、歴史を知り、先に住んでいる人々のプラスになるよう、立ち振る舞わなければならないのは、言うまでもない。

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