2002年1月16日、インドのジョン科学技術相は「グジャラート州スラト沖で9500年前のものとみられる古代都市の遺跡が見つかった」と公式に発表し、その後、世界中で話題になっている。
ほぼ1万年前に、モヘンジョダロ遺跡と同じものがすでに存在していたのだ。これは一体、何を意味するのだろう。
19世紀半ばには「レムリア大陸」説が発表されて、当時の学界を大いに揺るがせた。太平洋に古い大陸があり、「人類誕生、文明揺籃の地」だったというのだ。確かにインドネシア、マレーシアにはスンダ大陸棚があり、氷河時代には古大陸を形成していた。この説では、太平洋の真ん中にも大陸があったとしている。つまり「ムー大陸」のようなものだ。
インドのカンベイ湾で見つかった古代都市は、「レムリア大陸」からは、離れすぎている。では、「アトランティス大陸」ではないか? と言いたくなるが、アトランティスは大西洋にあったとされている。
友人の作家グラハム・ハンコックは過去5年間、海底都市を探し求めて、世界中でダイビングを行った。その結果、インド東海岸に大規模な海底都市遺跡を発見している。チェンナイ(マドラス)の南60キロにあるマハーバリプラムの沖合に、都市遺跡があるのだ。この遺跡も6000年以上前のものであることがほぼ確実とされているが、発見されたのが2002年4月であり、調査はまだ始まったばかりだ。この5年間の調査結果は「神々の世界・アンダーワールド」(小学館刊)というタイトルで、出版された。
21世紀は、海洋考古学、水中考古学が花咲く時代のようだ。そして、カンベイ湾に沈む大規模な古代都市が9500年前に存在したことが確実になると、世界史は大きく書き換えられることになる。グラハム・ハンコックは「人類の歴史には忘れ去られた1幕がある。私たちは健忘症にかかっているのだ。先史時代には高度な科学を持った文明が存在していたが、忘れ去られているのだ」と、いつも主張してきた。ハンコックの主張が正しいことが証明されたのだろうか?
正しいことが証明されたかどうかを知るためには、NIOTの調査を厳しく吟味する必要がある。そこで2002年7月中旬にNIOTを訪問し、私自身の目で遺物を見て、いろいろな疑問を責任者にぶつけて見ることにした。
<インド国立海洋技術研究所(NIOT)の地質学コンサルタントのS・バドリナラヤン氏のインタビュー>
大地:都市遺跡を偶然見つけたとのことですが、何の調査をしていたのですか?
バドリナラヤン:海の汚染調査です。毎年やっていますが、今回は最新鋭のサイドスキャン・ソナーを使って、海底地形と、海底下の地形を調べたのです。そうしたら、幾何学模様の都市遺跡が浮かんできたので驚愕しました。過去30年以上海底と地上の地層を見ていますが、これが人工物であることは100%まちがいありません。
大地:木材だけの年代測定で、9500年前の遺跡と断定できるのでしょうか?
バドリナラヤン:川にしか住めない貝も発掘されており年代を測定中です。人間の歯も年代測定中です。さらには遺跡の近くからサンゴが見つかっています。ご存知のようにサンゴは澄んだ海水がある、浅い海域でしか育ちません。つまりこの地域は、現在のような泥海ではなく。サンゴが住める海だったときがあるのです。海底都市もその時代のものでしょう。このサンゴも年代測定中です。
大地:木材はどのくらいの深さで見つかったのですか?
バドリナラヤン:海底の下50センチから1メートルの間です。海底下30センチまでは海の地層になっています。それより下は古代の川の地層です。そこから見つかっていますから、都市遺跡と同じ時代のものと言えます。木材をよく見ていただければ、わかりますが、明らかに人工的な鋭い切り口があります(写真参照)。
大地:海底に転がっていたわけではないのですね?
バドリナラヤン:発掘したときは、白くて新鮮でした。それが1日で黒くなってしまいました。1メートル近い深さに横たわっていたことは確実です。
大地:宝石類が見つかっており、穴が開いており、装身具だということですが、自然に開いた穴、あるいは動物が開けた穴である可能性はありませんか?
バドリナラヤン:インドの著名な研究所に依頼してドイツ製のマイクロ顕微鏡で詳しく調べてもらいました。その結果、化学反応はなく打撃跡とわかる割れ目が入っています。これは明らかに人間が鋭い道具を当て、打撃して開けた穴だそうです。
大地:遺物を見せていただきましたが、地上で発見される斧や石の道具に比べ、摩耗が激しいようですね?
バドリナラヤン:海の底に置かれていた時期に、摩耗されたのでしょう。海底の下で見つかる遺物は、摩耗が激しくても不思議はないと思います。でも、実物を見た考古学者たち全員が、これらのほとんどが人工遺物であることを認めています。
大地:さらに深く掘れば、地上で見つかるのと同じような遺物が見つかるはずですね。
バドリナラヤン:そう思います。もう一つ、付け加えておきたいのは、都市遺跡のあるところから15メートルほど離れた場所をいくら探しても、遺物が一つも見つからないことです。つまり海底都市遺跡がスキャナーに映っている場所だけから、このような遺物が見つかるのです。
大地:ずいぶん荒っぽい発掘の仕方ですね。
バドリナラヤン:しかたありません。カンベイ湾は世界で2番目に潮の変化の激しいところです。朝の6時に0メートルだったら、12時には11メートルの高さになり、午後5時にはまた0メートルに戻ります。満ち潮と引き潮の差が激しく、時速12〜13キロの海流が、いつも流れています。そのため、水中の砂や泥が巻き上げられ、海水はいつも澱んでおり、透明になるときはありません。これではダイビング調査はほぼ不可能ですし、地上の考古学的調査の手法は採用できません。
大地:ソナーからは何が読み取れますか?
バドリナラヤン:面白いことに都市の東側には小さな家が並んでいます。家の土台は3メートルx5メートル程度です。それが都市の中央部になると11メートルx7メートルの土台になり、西側は金持ち達の住居跡のようで、16メートルx15メートルの土台になっています。そこには大浴場の跡もあります。町の最西端の高台には大きな構造物があります。長さ200メートルx幅18メートルと、長さ45メートルx18メートルの建物です。これらの建物は壁で囲まれています。壁の高さは3メートルで、中には階段や回廊があるのがわかります。でも、神殿かどうかは、ハッキリ言えません。
大地:モヘンジョダロとそっくりなわけですね?
バドリナラヤン:そうです。下水道や街路もありますし、長さ600メートルのダムも存在します。
大地:今後は、どんな計画ですか?
バドリナラヤン:インド政府の後押しで、インド中のさまざまな国立研究所が総力挙げて、この大発見の検証をします。2年計画ですが、2002年12月から03年2月にかけては、更なる発見をしたいと計画しています。今回は海底の地図化をしますし、さらに深くまで発掘します。4〜5人乗りの潜水艦を使って、海底も見てみます。海軍の特殊ダイバーたちも協力してくれるので、ダイビング調査も行います。
大地:インドのナショナル・プロジェクトですね。
バドリナラヤン:その通りですが、グローバルな協力を求める考えです。ハーバード大学の南アジア考古学で名高いリチャード・M・メドウ教授も協力を申し出てくれています。世界中の研究機関に協力を仰ぐ考えです。
大地:2年後には世界史が変わることになりますね? 文明の発祥が5000年前ではなく9500年以上前になるわけですから。
バドリナラヤン:その通りです。世界史が変わり、文明の歴史が変わります。だからこそ高度に科学的アプローチを取る必要があると思います。2003年3月には国際シンポジュームも開催できるかもしれません。
大地:楽しみにしています。