kitombo.com | カルタゴ皇帝ゴンの世界 | 2004年1月12日
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カルタゴ皇帝ゴンの世界
「海の人類史10」

カルタゴ皇帝ゴン
1月12日

現代人の二大進化仮説
 現代人誕生の謎に迫る前に、現在まで対立している現代人進化の2大化説について、もう少し詳しく見てみよう。古代型ホモ・サピエンスから解剖学的現代人である現代型ホモ・サピエンスへの進化は従来から大きく分けて2種類の説が考えられ互いに対立して来た。人類学者の多くは多地域進化説として知られる仮説を支持して来たのだが、最近の研究では、この進化説が揺らぎ始めている。
 多地域進化説では、世界各地でホモ・エレクトスや古代型ホモ・サピエンスから現代型ホモ・サピエンスに同時多発的に進化したというもので、ヨーロッパではネアンデルタール人からアジアでは北京原人やジャワ原人の子孫の古代型ホモ・サピエンスから現代型ホモ・サピエンスに進化したとするものだ。
 一方、この説に真っ向から対立しているのがアフリカ単一起源説である。
 この説では、アフリカで進化した現代型ホモ・サピエンスが、世界中に散らばっていた古代型ホモ・サピエンスやホモ・エレクトスを完全に駆逐し入れ替わったとする説である。この説では「最初に現代型ホモ・サピエンスとしての進化がおこったアフリカ大陸」の北部に位置するレバント付近に現代型ホモ・サピエンスが古くから住み着いていた事を見事に説明可能である。
 更に近年ミトコンドリアDNAの研究から現代人の共通の祖先はアフリカにたどり着くという、ミトコンドリアイブ理論が出てきてアフリカ単一起源説の有力な証拠となった。
 近年、古代人のDNA研究が盛んになってきているが、一般的に研究に使われるDNAは、人間の遺伝にかかわる核DNAではなくミトコンドリアDNAである。動物の細胞の中には、エネルギーを作り出す微小器官ミトコンドリアが存在する。このミトコンドリアは、もともと単独で存在した生物が動物の細胞内に取り込まれ、共生と言う形でエネルギー生産を行うようになったと考えられている。したがってミトコンドリアは独自のDNAを持っている。
 このミトコンドリアDNAと核DNA違いは、核DNAは人間の遺伝情報を両親から受け継ぎ生殖のたびに複雑に変化するが、ミトコンドリアDNAは、母親のみから受け継がれ変化しない事にある。ミトコンドリアDNAが変化する時は、ただ一つ突然変異である。
 したがって核DNAでは、両親が組み合わされた変化と突然変異があるの対し、ミトコンドリアDNAでは、突然変異のみになる。突然変異は発生する確率は一定と考えられ、長いスパンで見ると変化量を追っかける事により一種の分子時計としての働きがある。
 更にミトコンドリアDNAは核DNAよりずっと高率に突然変異を起こす事から、各集団のミトコンドリアDNAの変異量を測定する事で集団が分かれた年代がわかるのだ。


 この手法に基づき現代人の各集団を比較したところ、現代人は15〜20万年ぐらい前のアフリカで一つの集団に収束すると言うのだ。
 そして単一起源説を決定的に有力にしたのが、ネアンデルタール人のミトコンドリアDNA抽出の成功である。複数のDNA研究から現代人、特にヨーロッパ人がネアンデルタール人と遺伝学的なつながりが無いとされたからだ。
 更に2003年6月、アフリカ単一起源説を決定付けると考えられる重大な発表がなされた。分子生物学者達が、ミトコンドリアDNAの変異から予測した通りの年代の、最古の現代型ホモ・サピエンスが、アフリカで発見されたのだ。エチオピアのミドルアワシュ近郊で発見された人骨が、約16万年前の現代型ホモ・サピエンスのものと判明したのである。
 これまで、アフリカ単一起源説を唱える学者は、15から20万年前のアフリカで、現代型ホモ・サピエンスが誕生し、古代型ホモ・サピエンスと入れ替わりに世界に広がっていったと主張してきた。しかし、アフリカのどこからも、それほど古い時代の現代型ホモ・サピエンスの人骨が発見されていない事が、難点だった。
 今回の発見が、少なくともアフリカ単一起源説を強力にサポートする事は、疑いの余地が無い。今回、16万年前と確認された人骨は、大人の頭骨2体と子供の頭骨1体分で、骨自体は1997年に発見されていた。頭骨は、頭蓋が厚く、目の上の膨らみである眼窩上隆起が多少発達しているなど、幾分古い形質も残している事から現代人に直接つながる亜種として、ホモ・サピエンス・イダルツ(Homo sapiens idaltu)と命名された。
 それでは、すべての現代人はやはりアフリカ起源なのだろうか。しかし、たとえ最初の現代人がアフリカに出現したとしても、世界中の古代型ホモ・サピエンス全てを、滅ぼして入れ替わったとするアフリカ単一起源説を、決定付ける事にはならないのでは無いだろうか。アフリカ単一起源説に異議を唱え、「現代人は世界中で並行して同時に進化したとする」平行進化説を唱える学者の、反発は避けられないだろう。

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