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 今から17,000年前から7,000年前(最終氷河期終盤)にかけて、我々の祖先の住む世界に恐ろしいことが起きた。ヨーロッパ北部及び米大陸北部を覆っていた巨大な氷冠が溶け、大規模な洪水が地球を引き裂いたのだ。海面は100メートル以上も上昇し、人間の居住が可能だった約2,500万平方キロメートルの土地が波に飲み込まれた。

 海洋考古学は、スキューバ(潜水用水中呼吸器)が登場してから約50年間、追究可能な学問領域として存在してきた。英国海洋考古学の第一人者、ニック・フレミングによると、人工の構造物、または人工の石造物が発見された遺跡は世界中で500に過ぎず、そのうち3,000年以上の歴史を有する遺跡はわずかに100―世界中でたった100箇所―しかない。

  これは、遺跡の数が少なかったからではない。海洋考古学に振り向けられるわずかな資金の大部分が、難破船の発見及び引き揚げに費やされていることがその理由の一つである。そのため、海中に沈んだ構造物の潜水調査に興味を示す考古学者の数は少なく、海中深くで侵食が進み、沈殿物に覆われた太古の遺跡の探索に要する莫大な費用をまかなうための資金――無為に費やされることが多いのだが――も不足しているのだ。加えて、ナショナル・ジオグラフィック・ソサエティーの依頼によってボブ・バラードが最近実施した黒海の調査を除くと、海洋考古学は、後氷期の洪水が何らかの形で文明発生の問題に関連している可能性があるなどとは考えてこなかった。

 1997年、南太平洋において長さ約2,000キロ、高さ3,000メートル以上の連峰が発見された。これらは海中に没していたため――実のところ、海は地球表面の70%を占めている――誰もその連峰の存在に気づかなかった。よって、そもそも連峰よりもはるかに小さな海中の目標物を探索していた海洋考古学者が、この半世紀の間に3,000年以上の歴史を持つ遺跡をたった100しか探し当てられなくても、責められないのである。大まかな地図のレベルであっても、地球海底の2億2,500万平方キロメートルの地図より、金星表面の地図のほうが優れているというのは、科学の優先順位における大きな矛盾を示す一例である。

 陸上においては、歴史上の偉大な文明が生まれた過程を(理論化するだけでなく)完全に理解したと考古学界が胸を張って言うためには、やらなければならないことがまだたくさん残っていることは明らかである。地球上には、例えば氷河期末期に4,000年間、緑で覆われていたサハラ砂漠など、考古学者が全く目を向けてこなかった広大な地域が存在する。そしてエジプトのような、1世紀以上も集中的に発掘が行われてきた国でさえ、これまでの確立された見解及びその成立年代に疑問を投げかけるような新しい発見が可能である。

 2000年12月に行われたペンシルベニア大学とニューヨーク大学の合同チームによる上エジプトのアビドスの発掘作業では、ギザの大ピラミッドの南側に埋葬されたクフ王の「太陽の船」のような、船の埋葬という不可思議な宗教的習慣が第一王朝前に由来する可能性が非常に高いことが立証された。10年前にアビドスで発見された、埋葬された14隻の船体は当初、第二王朝(紀元前約2675年)のファラオ、カーセクヘムウイの埋葬施設と結びつけられていた。だが、(木の厚板をロープで結びつけた、舳先が細くて長さが23メートルの精巧な"編み上げられた")船の一つを綿密に調査した結果、発掘者の間では現在、「船はカーセクヘムウイの囲い部分ができる数世紀前に埋葬されたものであり、ずっと前のファラオ、恐らくはエジプト第一王朝のアハ(紀元前約2920年)までも遡る王が死後の世界で使うためのものとして作られたものだった」と信じられている。(http://www.archaeology.org/online/news/abydos.html 英文) その通りだとすれば、アビドスに埋葬された船はとても初心者の仕事とは思えないものなので、この習慣(とそれに伴う素晴らしい宗教的付属品すべて)は第一王朝以前のものだと考えざるを得ない。

では、果たしてどれくらい前のものか。

それは誰にもわからない。

 2000年12月には、もう一つの興味深い新展開についての発表もあった。上エジプトのエルカブで発見された非常に珍しい古代の墓群についてである。この場所自体からは、8,000年前から2,000年前までの継続的使用を示す証拠が出土しているが、エルカブの墓群は第二王朝に起源すると考えられている。墓群は(直径18-20メートルの)円形に石を並べた造りになっており、そのうち2つは巨大な自然石を囲むように周到に配置されている。これらはヨーロッパの新石器時代の古墳と比較されてきたが、ベルギーの掘削者が認めているように、「エジプトで全く知られていないもの」である(http://www.usatoday.com/weather/science/archaeology/egyptdawn121200.htm)。

 したがって、考古学者にとって、いかなる文明であっても、他のどこよりも頻繁に考古学調査の対象になってきた古代エジプトであっても、その進化と発展の全体像を把握するのは大変な作業なのだ。

 だが氷河期末期には、世界の大陸縁辺と島の周辺ではアメリカ合衆国よりも広い面積が水没していたし、大オーストラリアの周辺だけでも300万平方キロメートル(インドの面積に相当)の土地が水面下にあり、さらに同じ300万平方キロメートルの土地が東南アジアの周辺で水没していた。そしてフロリダ、ユカタン、大バハマの浅瀬はメキシコ湾から完全に露出し、地中海、黒海、北海、および大西洋では島の大部分が海中に沈んでいたことなど例を挙げればきりがないが、こういった事柄も忘れないでおこう。

 私が考えるに、先史時代に関する科学的知識の深刻な"ブラックホール"が存在することは十分に有り得ることで、これは理論的にも可能であり、そして再考の価値があると考えている。よって私は、人類の起源及び文明の初期の進化に関する現代考古学の結論は、少なくとも水深120メートルまでの大陸棚に関する包括的、世界的な海洋考古学の調査がなされるまでは暫定的なものとして扱われるべきだと提案する。

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