神々の指紋」 から 「アンダーワールド」 へ (1)


手法に関するエッセイ

グラハム・ハンコック  




  1995年に出版した「神々の指紋」の主張は、はるか昔に繁栄しそして破壊された失われた文明が過去に存在したのだということでなく、存在したかもしれないということである。だから私はあえてこの本を科学作品としてでなく、この主張を擁護するための作品として書いたのだ。私は失われた文明の可能性が、主流派学問からは適切に探究されずあるいは検証もされずにいると感じた。失われた文明の可能性を支えるありとあらゆる優れた証拠と論証を集め、これらを熱烈に擁護することでそれを修復する役目を自身に課したのだ。   


   1990年代初頭「指紋」について研究していた時、失われた文明についての考察で私に重要な方向性を持たせるような新しいアイデアがいくつかあった。それらは、ロバート・ボーバルのオリオン相関理論、ランドとローズ・フレマスの南極と地殻の移動に関する仕事、ジョン・アンソニー・ウエストとロバート・ショックにより提示されたギザの大スフィンクスは考えられているよりはるかに古いかも知れないという地質学の事例などである。   


   同時に私はイグネシアス・ドネリーの時代まで1世紀以上も遡ると、この間何度も何度も違った方法・違った角度で言及されてきた失われた文明についての膨大な民間書籍の蓄積にも気づいた。そして文明の歴史は全て明らかになっており忘れられたものなど何一つないと微動だにしない見解に固執する主流派学者からは、これらの考えは一語たりとも受け入れられていないことを知った。  


しかし、と私は考えた。もし学者達が間違っていたら?  


もし私達が、自分の物語の中の重要な何かを忘れていたら?  


もし私達が、記憶喪失の人種だったら?  


   結論を言えば科学者は、解剖学的には我々現代人と同じ人類が少なくとも過去120,000年間はいたと確信している。  


   一方、私達の「歴史」は、5,000年前に出来た最初の都市と最初に書かれた記録から始まっている。そしてこれ以前の歴史は、人類がハンターの集合から食物生産に変化を始めたと考えられる(しばしば全く仮として)約10,000年前の前回の氷河時代の終わりに遡ることができるだけである。  


それではこれより前の110,000年間、私達は一体何をしていたのだろうか?  


   さらに私達が最後の5,000年だけはよく思い出すことができるが、時の流れの中を偶然生き延びてきたきわめて少ない残り物から、これより前の我々の歴史全てを"再構築"しなければならないということは、奇妙ではないだろうか?  


   そこで私は、心に芽生えつつあった新しい統一論を強化できる可能性があるかどうかを知るため、エーリッヒ・フォン・デニケンやゼカリア・シッチンのような作家の作品をも含めてアトランティスや他の失われた文明について書かれた一般向けの本をもう一度調べてみようと決意したのだ。  


   同時に私は、この問題について正統派の見方との差を示すことで失われた文明の「客観的」かつ「バランスのとれた」事実を示す事は私の仕事ではないと決意した。むしろ私は自身の役割を、正統派の見方に反対する説得力のある意見を示して主流派版の過去に対する見解に対して与えられている疑いのない支持や習慣的な許容を徐々に蝕む事であると考えたのだ。心の中に「指紋」のアイデアが最初に作られつつあった1980年代後半、正統派の歴史や考古学は、「正統でないもの」や「変わっていておかしいもの」等の集合に対して絶対的な知的優越性を謳歌していた。ギザの大ピラミッド群が王墓以上のものかもしれないとなんとなく感じる理性ある人々は"ピラミッド狂"との焼け印を押され、アトランティスに興味を持つものは誰でも精神異常の異端者とみなされ、失われた文明という概念一般は、20世紀に於いては意味を持たず大衆向け娯楽という重要でないものとなっていった。  


   この風潮に立ち向かうための唯一の方法は、熱烈で一方的な本を書くことであり−これこそ私が「神々の指紋」でしたことなのだ。  



   私は、ドネリーからのフォン・デニケンまでの一般向けの書籍やボーバル、フレマス、ウエスト、およびショック等のはっとさせる新しいアイデアのなかに最も刺激的・思索的なものを見出した。私はまた、過去に対する正統派の見方を攻撃することができるかもしれない材料を主流派の歴史や考古学研究に探し求めた。同時に私は、自身の限られた資金を出来るだけ広く使い、世界中にある最も魅惑的かつスペクタクルな古代サイト−エジプトのピラミッドとスフィンクス、ペルー・ナスカの線画、ボリビア・ティアワナコの巨石都市、そしてメキシコ・テオティワカンの太陽と月のピラミッド−の神秘に直接自身をかかわらせることにした。これらの場所に私は、他の人たちが既に構築していた理論の上に私自身の統合理論を築き、それらの理論が陥っていた憂鬱から失われた文明のアイデアを生き返らせようとする目的でさらなる証拠と観察を追加しようと試みたのだ。  


   私はこの目的が成功したと考えている。というのも今や大学の考古学や古代史学科では次のように話す講演者が増えているからだ。信じやすい学生達−すなわち、失われた文明が本当にあったかもしれないと感づいている私同様十分に愚かな学生達−に対して彼らの仕事は「ハンコックをやっつける」事だと。  


   私は、私の仕事をナンセンスとした3冊の本を知っているし、同じ目的の公式"暴露"ウェブサイトも知っている。また最近友人であるロバート・ボーバル(オリオン・ミステリーの著者)とともにBBC2テレビの著名な科学番組ホライゾンの全エピソードの検討対象に私自身を発見するという特権も得たのだ。  


   ホライゾンの主張は、先史時代の偉大な失われた文明に関するいかなる類いの考えも「不合理」・「欺き」・「ごみ」・「陰険」ということだ。ケンブリッジ大学考古学教授コリン・レンフリューは「ナンセンスの積み重ねという言葉でそれを要約できる」と宣言した。この番組は私を本質的なぺてん師・馬鹿・そしてたぶんその両方として描いた。私がこれまで書いたいかなるものにもどんなメリットも見つけることはできないと。私の考えは無価値という理由で退けられ、失われた文明仮説を支持するよう読者を導くために証拠を選択的に提示したとして私は非難された。  


   従って、極めて片寄った討論のバランスを回復するために私がまさしく選んだ方法−即ち無視されている失われた文明の可能性を擁護し主張する片寄った本を書くこと−は私の仕事に対する根本的な批判として引用されたのだ。


<続く>



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