kitombo.com | 萬亀眼鏡の東京散歩 | 2002年10月14日
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萬亀眼鏡の東京散歩
「庭を歩く」

飯森好絵
10月14日

 なんだかうんざりしてきて、早めに仕事を切り上げて出かけたくなった。誰とも話をしたくなく、独りでどこかに行きたかった。もう、日は暮れる。これから出かけるのに、どこがいいだろうと考えると、駒込にある旧古河庭園でバラと洋館をライトアップして夜間公開をする、というイベントがあることを思い出し、そこに決めた。
 バラの時期はおくとしても、普段は静かな庭園である。それが今日は大変にぎやかだ。ビールやアイスクリームなど軽食を売る屋台が出て、家族が、友人どうしが、恋人が、飲み物を片手に庭をそぞろ歩いている。洋館そばの芝生で屋外コンサートを催すとあって、芝生にはすでに思い思いに人々が座っている。
 まずは、馬車道をぐるりとめぐり、バラ園に入る。バラで有名なこの庭は春になると訪れたいところの一つであるが、植物に関してまったく知識を持たないわたくしは、秋にバラが見ごろを迎えるとはこの夜間公開のチラシを見るまで知らなかった。バラ園は地形を活かし、階段状に作られている。洋館のバルコニーから見たら、きっととても美しいことだろう。洋館は鹿鳴館などを作ったジョサイヤ・コンドルの設計によるものだ。真鶴産の赤みを帯びた小松石で覆われている。
 洋館に当てられたビームで、このぼこぼことした壁の表面が影を持ち、より凹凸がはっきりする。建物の中からも暖かい光が漏れ、壁の模様まで良く見える。芝生に新聞を敷きじっくりと眺めた第一印象はホラー映画の舞台だ。日の光を浴びた洋館は晴れ晴れしいが、下から照らされると少しおどろおどろしくなるとでも言うのか、光の効果は興味深い。普段と異なる印象を与えるのだから。
 日本庭園はライトアップされておらず、真っ暗闇で、立ち入り禁止。明るさに背を向けて、闇の向こうに目を凝らした。水の音がするような気がした。心字池に思いを寄せる。この日本庭園は京都の庭師として有名な小川治兵衛の作だそうだ。また昼間に来よう。
 秋の風が涼しい。冷たいくらいの空気の中、フルートとギターの音が響く。うんざりとした気持ちはどこかへ行ってしまい、心が静まってきた。わたくしは庭とお屋敷が大好きだ。東京はわたくしの庭だが、少し手入れが足りない。わたくしの庭を部屋に向かい歩きながら、音羽の鳩山会館の下で「やっぱり、きれいなお屋敷と庭がほしい」と心の中でつぶやいた。

 旧古河庭園秋バラと洋館のライトアップ 平成14年10月11日〜17日午前9時から午後9時。/ローズガーデンコンサート 10月12日〜14日午後7時30分〜午後8時10分(雨天中止)

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