kitombo.com | Kyonpe & Hide | 2007年10月1日 
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Kyonpe & Hide
「最後の旅行(82)」

Kyonpe & Hide
10月1日

 実に久しぶりの家族旅行であった。以前、といっても今からもう20年も前になるが、あのネズミーランドへ家族で一泊旅行をした。今でこそ日帰り圏でも一泊ないし二泊してゆっくり「夢の国」を楽しむ家族もいるが、当時は珍しいことであったと思う。
 今回も“シャラトン・ホテル・トーキョー・バイ”に泊まった。20年前とホテルの雰囲気は変わっていない。いろいろなものが変わりゆく中で、変わらないものを見つけるとなぜかホッとする。ボタン一つで自動開閉する電動カーテン。子供達2人が交替で開けたり閉めたりしている。そんなたわいのないことを4人共が喜んだ。久し振りで家族揃って旅行ができるというだけで幸せだ。
 窓越しに海が見える。陽光が海面に反射し眩しい。それを眺めるKyonpeの横顔がまばゆい。船が何隻か浮かんでいる。進んでいるようだが、止まって見える。このまま時が止まればいいのに、と切に思う。おそらくKyonpeもそして子供達も同じような思いであるに違いない。
 Kyonpeの体調を気遣い、平日にマイカーで出かけた。しばらくホテルの部屋でくつろいだ後、タワーレベル専用ラウンジへ行った。タワーレベルの部屋は料金が幾分高いが、専用のラウンジでソファーに座わったままチェックインができる。その上そのラウンジでは無料で朝食をとれるばかりか、ティータイムには飲み物とケーキを用意してくれる。夜にはバーとなってお酒とおつまみが供される。このサービスをことの他喜んだKyonpeであった。今回は食事もほんの少ししかとれなかった。それでもホテルという「非日常空間」の雰囲気に気と心と体全体で感じているようであった。
 テーマパークへは結局行かずじまいであった。
 ラウンジから見えるテーマパークの夜景、そして夜空を彩る花火にKyonpeはいつまでも見とれているのであった。

 翌日ホテルのランチビュッフェを覗いてみた。「屋台の味」と銘打っているだけあって、様々な屋台が出ていた。食欲はあまりないようなKyonpeであったが、その趣向が気に入り見て回った。一台の屋台の前で彼女は足を止めた。牛スジを煮て、味噌ダレをつけているだけの屋台。親父さんに一皿もらって、家族4人で分けて食べた。一口ほおばったKyonpeが涙を目に浮かべている。
 「田舎のおうどん屋さんの牛スジを思い出しちゃった。」
 彼女の郷里は讃岐うどんで有名。結納の為、父と2人で訪問した時も、結婚してからの里帰りの時も、いつも行ったそのおうどん屋さんはHideにとっても懐かしいお店だ。子供達も、おうどんはさることながら、牛スジに目が無かった。
 涙を浮かべる程喜んでくれたKyonpeの顔を見ながら、Hideは家族旅行に4人揃って来られることができ、心から良かったと思った。しかしこれがおそらく最後の家族旅行になるであろう・・・

 いざ帰ろうとすると、我が家の車が見当たらない。どういうわけかバスをHideが運転するのだという。仕方なくバスを動かして車中を見渡すと誰もいない。Kyonpeも子供達も。
 妙だと思ったところで・・・目が覚めた。

エピソード
 台風9号が関東に近づきつつある9月6日に、夢を見た。家族4人で旅行する夢を。
 覚えている内容は4つ。ホテルの部屋。牛スジを売っている店。家族4人で旅行できて良かったと思ったこと。そして大型バスを運転するHide。
 ホテルはおそらく“シェラトン・ホテル・トーキョウー・ベイ”であったと思う。伝統ある格式高いホテルというよりは、ゴージャスでサービスが行き届いたホテルをKyonpeは好んだ。そして、あちこち見て回るのではなく、ホテルでゆっくりのんびりするのが好きな人だった。
 讃岐うどんの店でおでんの牛スジを食べたことも良く覚えている。夢の中の牛スジ屋は、ホテルの中の屋台ではなく、小さいけれど独立した店だった。そこの親父さんが、牛スジを買った時のオマケとして我々にビール2缶と赤飯をサービスしてくれたことが、夢だったのにとてもリアルに思い出される。なにより4人揃っての家族旅行ができて、Kyonpeが思ったよりも元気で良かったと思った。

 Kyonpeが入院中、「また旅行がしたい。またロマンスカーに乗りたい。」と幾度となく言っていた。
 その夢が現実のものとしてあげられなかったという思いが、夢の中で「最後の家族旅行」を実現させてくれたのだという気がする。

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