kitombo.com | 三神たけるのお伽秦氏 | 2006年11月13日
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三神たけるのお伽秦氏
「牛糞」

三神たける
11月13日

 今年も、夏が暑かった。夏は暑いに決まっているが、今年の暑さは常軌を逸している。まさに地球温暖化を実感する一年であった。一説によると、地球温暖化の原因は二酸化炭素よりも、メタンガスのほうが重大であるともいう。なかでも、研究者が真顔で警告するのは、なんと牛のゲップだ。巨大な胃腸で発酵した牧草は、膨大な量のメタンガスを放出しているらしい。もちろん、そこから出た牛糞も、しかり。細菌によって、長期にわたってメタンガスを発生させているというから、恐ろしい。地球の未来は牛の胃袋にかかっているとは、なんとも笑えない話である。
 牛糞は堆肥にすればいいのだが、そのためには十分に発酵させなくてはならない。発酵せずに、そのへんに牛糞を捨てると、日本の法律では処罰の対象になるので、要注意。北海道の酪農農家では、毎日、大量に発生する牛糞の処理に困っていると聞く。
 そんな牛糞を名前にもつ人々がいたとしたら、どう思われるだろう。牛糞ー牛クソ、すなわち牛屎氏という苗字が、実際にあるのだ。鹿児島県の牛屎院という土地を所領したことによるものだが、彼らの姓がなんと「太秦氏」なのである。
 京都府葛野の太秦を本拠地とする秦氏の本流、まさに秦河勝の直系に当たる人々が11世紀ごろに鹿児島にやってきて、牛屎氏を名乗ったらしい。もっとも、彼らは平家を自称したらしいが、もちろんウソである。太秦と書いて、ウズマサと読ませる一族は、秦氏以外にはありえない。  牛屎の太秦氏の痕跡は、今も鹿児島に残る「太秦神社」に見ることができる。世に太秦殿や太秦明神を名乗っても、そのまま太秦神社と称すのは、日本で唯一、ここだけである。恐らく秦氏研究家の方でも、知っている人は少ないはずだ。
 というのも、神社が小さい。鳥居もなければ、目立つ標識も看板もない。地元の役場に尋ねたときも、くれた資料には「太巻神社」と書いてある始末。要するに、忘れ去られた神社なのである。現地を訪ねたときも、境内の改修記念碑に刻まれた太秦神社の文字が唯一の手掛かりだった。
 そんな小さな神社をお参りしていると、いやおうなく思いは牛屎なる文字へと飛翔する。地名とはいえ、牛屎という文字に抵抗はなかったのか。ウシクソという言葉に、別の文字を当てようとは思わなかったのか。モンゴル人は、今でも魔除けだと称して、子供たちに縁起のよくない名をあえてつけるようだが、大陸を放浪してきた秦氏にも、そうした思想があったのか。
 感慨にふけっていると、やはり考えてしまうのは、彼らのルーツだ。秦氏はユダヤ人である。古代イスラエル人の血を引く。約束の地に来る以前、祖先は古代エジプトにいた。奴隷の身ではあったが、古代エジプト文明を築いた人々であることは事実だ。ヨセフの時代、イスラエル人はエジプトを事実上、支配していたといってもいいだろう。
 ご存知の通り、古代エジプトは太陽の国。太陽神を崇めている。多神教ゆえ、太陽神も多い。ラー、アトン、ホルス、なかでもケプリは日没の太陽を象徴するとともに、フンコロガシの姿で描かれる。フンコロガシが転がす球形の糞が太陽をイメージさせるからだという。遠い祖先がフンコロガシに見た太陽神ケプリ。そのはるかなる記憶が牛屎に甦ってきたというのは考えすぎだろうか。
 一説に、地球温暖化の真の原因は、太陽の活動そのものが活発化してきているからだという。ならば、今こそ、ケプリの力が必要なのではないだろうか。日没のように、穏やかな日差しにしてくれるよう、フンコロガシに頼んでみよう。
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