ミャンマー奮闘記
「目には目を、嘘には嘘を」
豊川真由
5月30日
目には目を、嘘には嘘を
観光名所のマーケットに行く度に思うことがある。いくら現地人のフリをしていても、日本人の顔をしているだけでお金を持っていると見られてしまうのだ。例えヘロヘロのTシャツ、何日も洗っていないジーパン、スーパーで買った100円サンダル、穴のあいた地味なバッグ(実際の格好)という薄汚く安っぽい格好をしていても、それは変わらない。「日本人が来たぞ、ようこそ金づるちゃん♪」と思われている気さえする。それでも私がマーケットに足を運ぶのは、世界各国の生活文化が垣間見られるからだろう。
ミャンマーで一番有名なマーケットと言えば、繁華街の一角にある「ボージョーアウンサンマーケット」だ。巨大な敷地に洋服、サンダル、宝石、お土産など、多くのお店がごちゃごちゃと軒を並べている。「コニチワ」と話しかけてくる店員さんを横目に場内を歩いていると、素敵なコーナーを見つけた。オーダーメイドで民族衣装を作ってくれるお店だ。一度作ってみたいと思っていたので心の内では買うことを決めていたが、すぐに「買います」と言ってはならない。大事なのはここから。値段交渉によってディスカウント率が大きく変わってくるのだ。知恵と根気が必要だ。
まず、生地を愛しそうに見ながら欲しそうな目つきをしてみた。すると、店員さんは待ってましたとばかりに近づいてきて「安いよ!この色なら特別におまけしちゃう!」と笑顔で日本円にして1万円を要求してきた。私にはとても着られない派手な蛍光ピンクだ。もう少し地味な色がいいと伝え、いくらまでディスカウントできるか考えていると、どこからか女の人が現れ、「うちのお店にもおいで。種類も豊富、質も最高」と言ってきた。確かに他のお店も見てみたい気がする。気に入らなければ戻ってくればいいし…。すぐに気持ちは動いた。「ごめんね」と言い残して歩き出すと、先まで優しく接してくれた店員さんが突然ミャンマー語で怒鳴りだした。先頭を歩く彼女も何やら言い返していた。きっと「私が捕まえたカモに何するのよ!返して」「知らないわよ、このカモちゃんは私を選んだの」とでも話しているのだろう。
100メートルほど歩いたところに彼女のお店はあった。確かに生地は豊富にあり、デザインも可愛い。気に入ったものを見つけると、さっそく駆け引き交渉をスタートさせた。彼女の提示した値段は同じく1万円。これは一般のミャンマー人の月給の1.5倍にあたる大金だ。そこまで高級な生地には見えない。当然のようにディスカウントを求めるとすぐに8000円に下がった。ミャンマー人はこの値段で買うと言っていたが嘘だろう。「まだまだ高い!」と文句を言うと7000円になった。「もう少し!ね、いいでしょう?」とねだると6500円になった。諦めてしぶしぶ帰るフリをすると6000円になった。彼女は「これ以上は絶対無理。お店が潰れちゃう」と言うが、値段の落ちるスピードが早い。もう少しいけそうだ。態度では迷っているフリをしながらも、心では買う気は満々だった。「なぜそんなに高いの?日本でも同じ値段で買えるよ」と罠をしかけると5500円になった。さらに「私は生地を見れば良し悪しが分かるの。日本で洋服を売る仕事をしているのだから」と専門家ぶって生地を透かしてみたり、触ったりしていると、彼女は目の色を変えて「あなたバイヤー?」と聞いてきた。そうだとしたら一体どこまで値段が下がるのだろう。思わず「まぁ、そうかもね。生地の値段はだいたい分かるよ。これは5500円もしないでしょう」とハッタリを言ってみた。すると、彼女は突然馴れ馴れしい態度で「あなたとてもいい人ね。うちのお店はすごいのよ。大量にオーダーを受けられるし、パーフェクト」と言い、あっさり4500円に引き下げた。言い値の半額まで引き下げているのに「いい人ね」とはずいぶん適当だ。そろそろ潮時かと思ったが、最後に一言、「これを日本で着たら、友達は素敵!欲しい!どこで買ったの?って言うわ。この服はサンプルみたいなものよね」とトドメをさすと、「あなたは友達よね。秘密なんだけど卸価格は2000円だから、これが限界」と言って3500円を提示してきた。もう充分だろう。「OK!私たちは友達ね!」長いやり取りの末、狙った獲物はとうとう私の物となった。さらに私をバイヤーだと思い込んでいるせいか、縫製も綺麗だった。ラッキー。
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