kitombo.com | ミャンマー奮闘記 | 2005年6月13日 
kitombo.com

ミャンマー奮闘記
「立場の異なる2つのNGO」

豊川真由
6月13日

 ミャンマーでは、現在も武力による政権運営がなされている。平和な生活があたりまえの日本には、ミャンマーや近隣諸国で問題となっている売春問題、人的虐待、強制労働などに関わるニュースはほとんど飛び込んでこない。海外マスメディアへの報道の制限はもちろん、電話やEメールといった国内の通信機関さえ軍事政権に管理されているという…。ミャンマーとはそんな閉鎖された国なのだ。
 また、世界各国にはミャンマーの人権や環境などの問題解決に取り組むNGOが数多く存在する。一般にNGOとは「非政府」の市民主体の組織を意味するが、大きく分けると、「非政府」でありながらも政府と連絡を取り合い対等な立場で活動をする組織と、政府から離れた場所で独自に活動をする組織がある。この2つの違いは何なのだろうか?
 そんな疑問を抱えつつ、それぞれの組織に直接アプローチすることにした。

 ※ここでは、あえて「ミャンマー」と「ビルマ」の2つの表現を使い分けたい。1989年に軍事政権が英語呼称を「ビルマ」から「ミャンマー」に変えた。それにより、それぞれの表現が人に与える印象が、気持ち良くも、悪くもなってしまう現実があるからだ。政府公認のNGO関連の文章には「ミャンマー」を、チェンマイで民主化を願うNGO関連の文章には「ビルマ」を用いたいと思う。

◆Save The Life
◇ミャンマー政府公認の唯一のNGO
◇オフィス:ミャンマー/ヤンゴン
 諸外国の外務省やJICAなどと手を組みながら、農業、林業など、環境支援の対策を練っている。
 一方、助けを必要としている人達への支援活動も行っている。ミャンマーでは紫外線の強い照り返しが眼球を傷つけ、白内障になる人が多いのだが、それを治せる医者が少ないことや財政難により、ほとんどの患者は病院に行くこともできず、失明するケースが多い。Save The Lifeでは、これらの白内障患者を無料で治療している。
 代表のウインナインさんは、「国を民主化にするためには、数々のステップを踏む必要がある。今すぐ…というわけにはいかない。政党が変わったとしても、利権により体制が崩れかねないからだ。将来は、病院を増やし、銀行を建て、シンクタンクを作りたい。」と熱く語った。そのための土台作りとして、種々の分野の専門家を集め、国づくりのための研究、開発を行い、戦略を立てている。

◆HREIB(Human Rights Education Institute of Burma)
◇ビルマの少数民族によるNGO
◇オフィス:タイ/チェンマイ
 人権や教育問題などのワークショップを開いたり、ビルマが抱える様々な問題を伝える出版物やポスターの発行をするなど、幅広く活動している。諸外国の大きな組織からの援助もあり、海外で開かれる国際会議に出向くこともある。
 スタッフの多くは、カレン、カチン、シャン、パオなどのビルマの少数民族だ。中でも、ナイヤップというモン族の青年の話は特に興味深く、心に突き刺さるものがあった。
 ナイヤップはビルマのモン州で小規模自作農の家に生まれた。7歳の時、家に軍人がやってきて、税としてその年の収穫をすべて出せと命令された。しかし家にあった穀物では足りず、父親は近所で買ってきてまで払ったと言う。また、軍人から「砂利道を膝で歩け」と命令を受けたらそれに従うしかなく、反抗すれば殴られるそうだ。そんな軍人の不条理な行為に腹を立てつつも成すすべもなく、悶々とした思いを秘めていた。その後、大学を卒業したが、少数民族の彼には将来のあらゆる可能性は閉ざされていた。そこで、家族にすら知らせずにタイへ渡り、チェンマイで民主化運動を始めたのだ。彼の将来の希望を聞くと、「ビルマが自由になり、帰ることができるなら、教育の行き届いてない地域で子供たちのために働きたい。でも民主化は簡単には実現しないと思う」と言った。祖国に帰りたくても帰れず、自由に身動きもとれない環境にある。「真由はどこの国を旅行してきたの?ぜひビルマにも行って欲しい。いろいろ話を聞かせてよ」と明るい笑顔で話すナイヤップに、私は100%の笑顔を返せなかった。彼のパスポートはもちろん偽造だ。ビザも簡単に取れ、海外でも自由に動き回れる日本人の私とナイヤップとは、あまりに違った環境で過ごしていたからだ。
 その夜、ナイヤップはバイクでチェンマイの町を案内してくれ、夜景が綺麗に見える山へ連れて行ってくれた。途中でバイクが故障して山道を歩いて下るハプニングもあったが、そういった時間も、何気ない会話も、とても楽しい思い出となった。何より、国境や民族といった壁を超えてお互いを知り合えたことが私は嬉しかった。

◆UNYL(United National Youth League)
◇少数民族青年合同連盟組織のNGO
◇オフィス:タイ/チェンマイ
 カチン、モン、アラカン、シャンといった多くの民族の若者が集まり、ビルマの民主化、自治権獲得などに関して話し合い、情報交換や出版物の発行をしている。将来、ビルマの国づくりにどう関わっていくかといった議論にも真剣だ。
 現在、タイ国境の難民キャンプには15万人のビルマ人が暮らしていると推計されている。しかし、タイ政府の難民への対応は年々厳しくなっているのが現状である。UNYLはそんなタイ政府から逃れてきた少数民族の会議の場として、また寝所としても活かされている。

これまでのコラム
kitombo.com