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ピーターパンの世界
「ピーターパンの世界(26)」

大地舜
2月19日

(写真をクリックすると大きい写真が見られます。)

 独立国であるマルタ共和国は、イタリア半島の先端にあるシシリー島の、さらに南の地中海に浮かぶ島だ。詳しくはインターネットで、中央地中海通信というサイトを見ていただきたい。
 この島は人種のるつぼで、ヨーロッパの中に入れられているが、アフリカの影響が強い。マルタ語もアラビヤ語に良く似ている。人種はヨーロッパ系とアラブ系が入り交じっている。
 この島には古代エジプト文明よりも古い巨石神殿があるので、古代アトランティス文明の一部ではなかったかといわれている。写真はハジャーイム神殿だが、これは4000年以上前に作られている。一番古い巨石神殿ジャガンティアは6000年前に建造されており、古代エジプトの大ピラミッドよりも古い。
 淡路島ほどの小さな島に、このような巨石神殿の跡が20以上も存在するのも奇妙な話だ。
 この島の地下にも神殿が存在する。ハイポジウムと呼ばれているが、写真のように美しい。
 マルタ文明に関する詳しいことは、黄トンボ・ウイークリーに掲載した私の紀行文『マルタ諸島の巨人神殿を作った謎の先行文明』や『謎の地下神殿ハイポジウムの全貌』を参照して欲しい。
 さて、マルタ島に来るのは4度目だが、この島には魔女たちがいる。と、言っても、土地の口の悪い男たちが、男勝りに活躍する女性たちのことを陰で魔女と呼んでいるだけ・・・。だが、事はもっと深刻かもしれない。なぜならマルタ島は保守的なカソリック教徒の牙城だからだ。
 時代が中世ならば、私の友人の魔女たちは、確実に火あぶりにされている。たとえば魔女グループのリーダーのジャネットは、占星術師であり、フォークを片手に水脈を当て、霊と言葉をかわせる霊媒だ。2番手のジャーディンは人々の難病を治癒させる能力を持っている。3番手のルイーズは、アロマセラピーやマッサージの専門家だ。なぜか、私は彼らのグループに入っている。何か、気が合うのだ。前世に関係があるのだろうか。
 ローマ法王が住むバチカン王国はカソリック教の中心だが、暴動が起こりバチカンから逃げる事態にでもなったら、法王が行くところは、マルタ島しかないと言われている。それほど、マルタ島はカソリック教の強いところなのだ。
 ジャネットは毎週のように「スピリチャル」な集まりを主宰している。だが、毎週日曜日のカソリック教会の礼拝では、「この集まりに参加するとあなたは地獄に落ちます」と牧師が信者に警告を発している。
 カソリック教会の攻撃を受けているジャネットやジャーディンたちは、反撃に出た。チベット密教の教えをマルタ島にもたらそうというのだ。それが今回の、チベットの生き仏・アヤン・リンポチェによるポア(転移)の修業プログラムなのだ。
 マルタ島に到着したのは修業が始まる前日の朝だった。午前11時ごろホテルにチェックインする手続きをしていたら、お金持ちそうな英国夫人がカウンターにやってきた。白のロングドレスに白髪で、妖精のようなスピリチャルな雰囲気がある。<この人はポアのプログラムの参加者だろうな・・・>と思ったら、英国夫人の方から声をかけてきた。
 「あなたはポアのプログラムの参加者でしょう? 一目でわかったわ。私、これから娘を迎えに空港に行くのよ。また後でね・・・」
 やれやれ、私にも妖精の匂いがするのだろうか・・・。いや、男だからピーターパンの匂いか・・・。
 部屋は13時まで用意できないというので、荷物を預け、プールサイドのレストランにおもむいた。11月7日で肌寒いのにヨーロッパ人の観光客たちが、裸になってプールサイドで日向ぼっこをしている。お年寄りが多い。私は生ビールとスパゲティーを注文して、東京に電話をかけた。日本は夜の7時だ。
 だが、マルタ島にイタリア風のスパゲティーは無かった。あるのは短く切られたパスタ料理だけだ。イタリアのスパゲティーの元祖は中華麺だといわれているから、マルタ島まではマルコ・ポーロの影響が及ばなかったということだろうか。
 私の部屋は4階で、写真のように港を見渡せる。
 一眠りしてから夜の7時に2階のメイン・ダイニングルームに行って食事をすることにした。
 メイン・ダイニングルームに入ると、ウエイトレスが、「どうぞこちらに・・・」と案内してくれる。案内されたのは大テーブルで、20名ぐらいの人々が座っている。
 「ハイ、シュン、ウエルカム! どうぞ空いている席に座って・・・」と、魔女ジャーディン。魔女ジャネットやルイーズも顔をそろえている。
 テーブルの端にはチベット僧の赤い僧衣を着た人が3人いる。その隣を無理して空けようとするので、「ここで十分です」と慌てて、真ん中あたりにある空席に座った。どうやら、わざわざ日本からマルタ島までチベット密教を学びに来る奇人がいることは、プログラム参加者に知れ渡っているようだ。
 隣に座ったキャットとよばれるマルタ女性は、英国に在住しており、ハリウッド映画のプロデユーサーのアシスタントをしているという。
 「最近、南アフリカから帰ってきたの。『紀元前1万年』という映画の撮影を終わらせたのよ。大変だったわ」
 ということは、キャットは私の友人の作家グラハム・ハンコックとも会っている。グラハムは『紀元前1万年』の撮影現場に行っているからだ。でもキャットに、グラハム・ハンコックの話はしなかった。
 夕食の後、部屋に戻るときに「しずかちゃん」が話しかけてきた。漫画『ドラえもん』にでてくる「しずかちゃん」にそっくりな女性に出会ったのだ。彼女はまだ24歳、英国の大学を卒業している。名前はヘルガ。大学で日本画を専攻したまだ可愛らしい画家だ。
 この9日間、すべてにできの悪い「のび太」のような私は、この優秀なヘルガちゃんにすっかり面倒を見てもらってしまった。

(つづく)

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