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大ピラミッドの話
「水中考古学とインターネット2 その3」

今尾 いくる
6月9日

 黒海が淡水と海水の入り混じった変わった海で、近くには歴史遺産が多くあることを説明しました。もう少し見てみましょう。近年の発掘史です。
  • 1985年米ソ冷戦下のソ連邦が健在であった時、ブルガリアとソ連による合同考古学調査が行われ、恐らくブルガリア沿岸と思われますが岸から40マイルの海底で石版が発見されています。発掘にあたったブルガリアのディミトロフ博士は、今回のバラード博士の水中ロボット探索にも全面的に協力しているようですが、発見した石版を「ノアの石版」と名づけています。理由は追ってお話しします。
  • 黒海が自由に探索できるようになったのは1991年のソ連邦崩壊以後で、以後多くの調査が行われています。1990年代中頃にはコロンビア大学の地質学者ビル・リヤンとウオルター・ピットマンが7600年前に黒海で洪水があったと発表します。氷河時代がまだ終わっていない1万5000年前、黒海の大きさは今の3分の2しかなく、水面もずっと低い位置にありました。ご存知のように氷河期が終わると世界中の海面が上昇しましたが、ボスポラスはダムのように上昇した海面をせき止めていました。しかし7600年前、水圧に耐え切れずとうとう崩壊し、ナイアガラを遥かに上回る規模の滝となって時速80キロメートルで海水が黒海へ流れ込んだのです。そして淡水湖が海に変わったのです。先週紹介したバラード博士も1999年に 水深約150メートル(510フィート)の地点でかつて黒海が淡水湖であった証拠を見つけています。
  • 1999年、トルコ沿岸で紀元500年ごろの木造船が水深約300メートル(1000フィート)で見つかり、説明した無酸素層のおかげであたかも一週間前に沈んだ如くであるとか。因みに水深80メートル(275フィート)の地点でも、ギリシャあるいはローマ時代(紀元前5−3世紀)の木造船が見つかり、これは黒海で発見された船では最も古いものだそうです。船にはたくさんの壷が積まれていて中身は、塩漬けの淡水なまずであったとか、ただし水深が浅い為見つかったのは骨だけだそうです。これは上級階級の食べ物ではなく、軍人あるいは庶民の食べ物だそうです。今後数年にわたり調査行い黒海での嘗ての商業ルートを解明するとか。

ギルガメッシュ叙事詩とノアの洪水
 前述のように黒海では、およそ7600年前に起きた洪水の様子が残っていて地質学的に立証されています。因みにこの頃の日本と言えば縄文前期の縄文海進が進行中であった時代です。となると関心をもたれるのがこの地域に残る洪水物語です。
 数ヶ月前のイラク戦争ではアメリカ軍が、クウェートから入ってチグリス川を遡るように進みましたが、戦争初期にイラク軍が抵抗したバスラという町が何度も登場しましたが、このバスラ近くにあるのが現在認識されている中で最も古い都市ウルク、紀元前3500年ごろのものとか。そしてこのウルクを治めていた実在の王ギルガメッシュをモデルにした物語がギルガメッシュ叙事詩で、“生命の探求“という人類永遠のテーマの物語です。神話物語として描かれていますが、一方で人の生業について泥臭いことも書いてあり、人間性と芸術性を備えた物語です。
 主人公のギルガメッシュが物語りの中で会って話しを聞いたのが、老いた聖人ウトナピシュテムです。老人の語るところによると、嘗て彼は神から洪水が起こることを知らされ、さらに教えられて大きな舟を造り、妻や動物たちを乗せて6日6晩続いた大洪水を生き延びたとか。全ての人間を滅亡させた大洪水の後に一度目に鳩を放ち、二度目につばめを放ち、三度目に大鳥を放って陸地を探します。この話は10,000‐7,000年前頃のものとされています。お気づきのように、この聖人ウトナピシュテムの語る洪水物語は聖書のノアの箱舟の物語とほとんど同じです。ちなみに書かれた年代からいうと聖書の方が後なので、ノアの箱舟の物語がギルガメッシュと同じということになります。

バラード博士の調査
 以上述べてきたような背景で黒海での探査がなされようとしています。紹介した遠隔水中ロボットを使った探査で、バラード博士はつぎの目的をもっています。

  • 昨日沈んだような船の調査を行い、どのようにして無酸素層が木造船を保存したかを研究する。
  • 7600年前に起きた大洪水の前に存在していたであろう人が住んでいたという証拠を大陸棚を中心に探す。そして“ノアの箱舟”に関する洪水物語の検証をしようと考えている。探索候補地は明記されていませんが、恐らくブルガリアのVarnaを出てProvadiska川、Kamchia川の河口あたりで、ノアの石版が見つかった付近でないかと思われます。

 黒海でのバラード博士の探索も今回で5回目になり、今年は7・8月に行われるそうです。黒海だけでなくイスラエルやエジプトも調査するので全行程は45日とか。この探索には、“例によって”ナショナル・ジオグラフィックが応援していて毎週日曜日の特番で放送するとか。近々インターネットなどで黒海の新しい情報がもたらされるものと思います。

<バラード博士の計画を伝えるニュース Explorer plans a digital dig beneath the sea >
http://www.msnbc.com/news/868842.asp
complete story をクリックして中に入ると水中ロボットのイラストがあります。

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