その3「ジープは行くよ、どこまでも〜チン州を目指して〜」
歩いている、歩いている。ただ、ひたすらに女も男も歩いている。
しかも、何か重そうなものを背負っている。
それを車上から、馬力のあるジープの上から見下ろす自分がちょっと気恥ずかしい。
(山道を歩けと言われたら音を上げるだろうが)
珍しいものをいつも見ていたいわたし。
体験できるなら、何でもやってみたいわたし。
ところが、そんな私達が実は一番珍しいのだろう。
みんなが見てる。声をあげる。ジープを追いかける。
ただ、目が合うとニコッとしてくれる。それが、とてもうれしい。
ミャンマーを知るには、どうしたら良いのだろう。
それには、実際にミャンマーの人と接するのがふさわしい。
何を食べて、何を着ているのか、どんなものが好きなのか、
どんな恋愛をするのか。とても、気になる。
ジープで一体何時間走っただろうか。
運転手は寡黙なアウンサンお兄ちゃん。
助手席から見える横顔が江口洋介に似ている。
必需品はビンロー。眠くならないように。
ただ、ひたすらに太陽の下、砂を巻き上げて進む。
休憩するたびに、笑う。皆、砂で髪を染めたようだから。
いくつもの町を超えた。
その1つ1つの町に立ち寄りたいくらい大小いくつもの町を通った。
時にはごはんを食べに、ジープを下りる。
その先々で友達ができる。果物をもらった。言葉も教えてもらった。
何て良い笑顔をするんだろう。
皆がまた戻って来いよ、帰りに寄りなさい、と言ってくれる。
私はうれしくて、また戻りたくなるのだ。
紙風船は偉大だ。軽くて安くて、色がきれいだ。
これで何人の子供達と遊んだか。
子供とは言葉が通じなくても、きっちり遊ぶ事ができる。
絵を書いたら、「それはウサギ」とちゃんと伝わる。
紙風船なんて、すぐコツを覚えるくせに兄弟全員と私で戦った。
決して手を抜く事はない。彼らに対して失礼だから。結果は、引き分け。
逆に教わる事もたくさんある。
兄弟皆が台所で仕事をしている。私もかまどの火の燃やし方を教えてもらう。
とれたての魚のさばき方を見せてもらう。
台所には日常の文化であふれていた。
台所では彼らはいっちょ前の主人だった。
お祭り半ばで岐路に着く途中、明け方にその家で最後のご飯を食べた。
皆が見送りに出てきてくれて、家族写真のように集まって写真をとった。
さみしかったけど、うれしかった。
気付けば、有名なパゴダに行った事、お祭りに参加した事、
それらが負けてしまう位、ミャンマーで一番輝いている思い出は友達だった。
余談だが恋愛について。解説はアウンサンお兄ちゃん。
「チンの星空と山があればどこでもデートができるのさ」
ロマンチックなお言葉。チンの星空は暗闇を照らすのではなく彩るから。
つまり、真っ暗という事。
つづく